「SEになる」という選択肢は、最初はなかった
陸上自衛隊を退職したとき、「次は何をしようか」という明確なビジョンはなかった。
体力には自信があった。でも民間で使える資格も職歴もない。自衛隊でのキャリアは特殊で、そのまま評価される場がほとんどない。
「とにかく給料が安定している職場に入れればいい」という気持ちで職探しをしていた。
ITエンジニアになったきっかけ
知人の紹介で、小さなシステム会社でアルバイトをすることになった。
最初の仕事はサーバーのケーブル整理やラック作業だった。技術的なことはほとんどわからなかったが、先輩SEの仕事を横で見ながら、少しずつ覚えていった。
「プログラムを書ける人」になるイメージはなかったが、「インフラを管理する人」なら自分でもできそうだという感覚があった。インフラ作業は自衛隊での設備管理・機材整備に似た感覚があって、馴染みやすかった。
そのまま正社員になって、運用保守から経歴が始まった。
最初の数年間でやったこと
資格取得
インフラSEとして仕事を続けるには、知識を証明するものが必要だと感じた。
- 基本情報技術者試験
- サーバー系のベンダー資格(MCP等)
- ネットワーク系の入門資格
資格は「採用されるため」よりも「知識を体系的にインプットするため」に取っていた。勉強していないと、現場で先輩の言っていることの半分もわからなかった。
現場で気づいたこと
自衛隊で鍛えられたのは「指示に従って確実に動く」力だ。ITの現場でも、これは意外と大事だった。
マニュアル通りに手順を踏む。確認を怠らない。報告を正確に行う。これが運用保守の仕事の基本だ。自衛隊で身についていた習慣が、そのまま使えた。
運用保守から設計に上がるまで
運用保守でキャリアをスタートしてから、設計(上流)案件に入れるようになるまで、数年かかった。
転換点になったのは「設計書を書く機会があった」ことだ。
ある現場で人員不足があり、本来は上のSEがやるはずだった手順書の作成を任された。慣れない作業だったが、一から書いてレビューを受ける経験を繰り返した。
「手順書を書ける人」「設計書が書ける人」として認知されてから、次の案件で設計フェーズから呼ばれるようになった。
フリーランスになった理由
正社員SEとして数年働いて、フリーランスへの転身を考えた。
理由は単純だ。同じ仕事をしているのに、正社員と一次受けフリーランスで単価が倍近く違うことを知ったから。
フリーランスになったことで、収入は増えた。でも当然リスクもある。
保険・年金が自分持ち。案件が切れれば収入がゼロになる。確定申告も自分でやる。会社員のうちに「当たり前にあったもの」を全部自分で管理しないといけなくなった。
転身して良かったと思うこと
良かった点
- 収入が上がった
- 案件を選べるようになった
- 自分のスキルが直接評価される実感がある
- 副業・情報発信など、会社員ではできなかったことに挑戦できている
大変だった点
- 最初の確定申告で頭を抱えた
- 案件が終わると次を探すプレッシャーがある
- 仲間がいない(現場のメンバーはいても、同じ立場の人間が周りにいない)
自衛隊出身者がITエンジニアに向いている点
個人的に感じる相性の良さ:
指示を正確に実行できる 運用保守は手順通りに動くことが基本だ。「マニュアル通りにきっちりやる」のが評価される場面が多い。
報告・連絡・相談が染み付いている 現場でのトラブル報告・作業完了報告を上に上げる習慣は、自衛隊で叩き込まれた。IT現場でも同じ行動が求められる。
体力がある 障害対応で深夜に呼ばれる。夜間の定期作業がある。体力が要る場面は意外と多い。
まとめ
自衛隊を辞めてITエンジニアに転身したことは、振り返ると正しい選択だった。
転身の最初は「知識ゼロ」から始まったが、現場で経験を積み・資格で知識を体系化していくことで、少しずつ上に上がれた。
「未経験からITエンジニア」の選択肢は、今でも十分あると思っている。インフラ系から入るのが、バックエンドやフロントエンドより経験を積みやすい面もある。
もし今、キャリアの転換を考えているなら「まず運用保守から入る」はアリな選択だ。