「使えばいい」だけだと事故が起きる
AIツールを使い始めると、「何でも使えばいい」という感覚になりやすい。
でもインフラの仕事でAIツールを使うには、使ってはいけない場面を知っておく必要がある。使い方を間違えると、情報漏洩・作業ミス・品質低下につながる。
自分がルールとして守っていることを書く。
①顧客・プロジェクトの機密情報を入力しない
やってはいけないこと:顧客名・IPアドレス・パスワード・サーバー名をAIに入力する
AIツール(Claude・ChatGPT等)に入力したテキストは、プロバイダーのサーバーに送信される。どのように保管・利用されるかはサービスの利用規約による。
機密情報を入力すると:
- 情報漏洩のリスクがある
- 顧客との契約に違反する可能性がある
- 最悪、損害賠償につながる
正しい使い方
設計書の「構成・フレームワーク」だけをAIに作らせて、具体的な設定値・IPアドレス・サーバー名は自分で埋める。
❌ 「192.168.1.10のRHEL8サーバーの初期設定手順を作って」
⭕ 「RHEL8サーバーの初期設定手順書の構成を作って。
設定値はXXXで置換しておいて」
会社のポリシーとして入力禁止が定められている場合はそれに従う。
②AIの出力をレビューなしで使わない
やってはいけないこと:AIが作ったコード・手順書をそのまま本番に適用する
AIは間違った情報を正しそうな形で出力することがある(ハルシネーション)。
特に危険なのが:
- バージョン固有のコマンド(古いバージョンの構文が出てくる)
- 設定ファイルのパス(環境によって違う)
- 依存関係のあるコマンドの実行順序
インフラの作業でミスが起きると、本番サービス停止につながる。
正しい使い方
AIが出した手順を自分でレビューしてから使う。特に以下は必ず確認する:
- コマンドが正しいか(公式ドキュメントと照らし合わせる)
- 実行順序に問題がないか
- 本番環境で実行して問題ない内容か
「AIが出したから合ってるはず」は危険な思い込みだ。
③判断が必要な作業をAIに丸投げしない
やってはいけないこと:「この設定で本番に適用していいか」をAIに判断させる
AIは現場の状況・顧客の制約・組織のルールを知らない。
「この設定変更をしても問題ないか確認して」と聞いても、AIが返すのは「一般的には問題ありません」という答えだ。その現場固有の制約を踏まえた答えではない。
正しい使い方
判断はPMや上位のSEに確認する。AIは「選択肢を整理する」「リスクを洗い出す」「他の人の観点を確認する」補助に使う。
⭕ 「RHEL8のSELinuxをPermissiveに変更するリスクと代替手段を教えて」
→ AIの出力をもとに、最終判断は自分・PMが行う
❌ 「SELinuxをPermissiveに変更していい?」
→ 判断をAIに委ねている
④AIの出力を編集せずに納品しない
やってはいけないこと:AIが作った設計書・手順書をそのまま顧客に提出する
AI生成のドキュメントは:
- 環境固有の情報が抜けている
- 顧客の用語・表記基準に合っていない
- 「なぜその設計にしたか」の背景がない
そのまま出すと、レビューで大量の赤字が入る。または「書いた人間が内容を理解していない」と判断される。
正しい使い方
AIの出力を骨格にして、自分が現場情報を加えて完成させる。完成したドキュメントは「自分の言葉で説明できる内容」になっているか確認する。
⑤AIツールの使用を隠さない
やってはいけないこと:AI生成のコード・ドキュメントを「自分が書いた」として提出する
AIで作ったものを「自分が作った」として提出することは、正直さの問題だ。
現場や顧客によっては「AIツールの使用禁止」が定められている場合がある。先に確認しておく。
正しい使い方
チーム内でAIツールの使い方のルールを共有する。使うことを隠すのではなく、「AIで初稿を作って自分がレビュー・加筆した」という事実を開示できる状態で使う。
セキュリティ設定でAIを安全に使う
ChatGPTには「会話履歴とトレーニングへの使用をオフ」にできるオプションがある(Settings > Data Controls > Improve the model for everyone をオフ)。
Claudeはビジネスプランでは入力データをモデルトレーニングに使用しないことになっている(利用規約を確認する)。
会社やチームで使う場合は「Enterprise」プランを使うと、データポリシーが強化されていることが多い。
まとめ
AIツールをインフラSEの仕事で使うときの「やってはいけないこと」:
- 機密情報を入力しない(顧客名・IP・パスワード等)
- AIの出力をレビューなしで使わない(ハルシネーションに注意)
- 判断が必要な作業をAIに丸投げしない(最終判断は人間が行う)
- AI生成のドキュメントをそのまま納品しない(加筆・現場情報の追加が必須)
- AIツールの使用を隠さない(チームで使い方のルールを共有する)
AIは道具だ。使い方を間違えると事故が起きる。正しく使えば生産性が上がる。